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当研究室発のチームが1stRoundに採択されました

当研究室の研究シーズの事業化を目指すチーム「SACMOTs」が、第10回「1stRound」支援先に採択

 作物学研究室(以下「当研究室」)の研究シーズを活用したスタートアップ設立を目指すチーム「SACMOTs(サクモツ)」(以下「SACMOTs」)は、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(本社:東京都文京区本郷、代表取締役社長 植田浩輔、以下、「東大IPC」)が運営する国内最大規模を誇る複数大学共催の起業支援プログラム「1stRound」の第10回支援先として採択されました。

 ●SACMOTs(サクモツ)の紹介

 SACMOTsは「低農薬・低肥料で高収量・高付加価値の食料生産 」の実現を目指し、100年以上の歴史がある当研究室の「植物の収量・品質向上」に関する圃場から実験室レベルでの知見やそれに基づく研究シーズの事業化を目指すチームです。将来的なスタートアップ設立を念頭に、当研究室のOB・OGが中心となって構成されたチームです。

どんな社会課題があるのか

 みなさんは「緑の革命」という言葉、ご存じでしょうか?「緑の革命」とは、第二次世界大戦後の「1960-1970年代に途上国を中心に行われた大規模な農業技術革新」のことです。これにより、小麦、コメ、トウモロコシなどの主食作物の収量が劇的に増加した結果、世界中で飢餓を回避した、と言われています。その「農業技術革新とは?」なんだったのかというと、要因は2つあります。一つは「高収量品種」の開発、そしてもう一つは「大量の化学農薬と化学肥料の投入」だったんです。その大量の化学農薬と化学肥料の投入、の結果地球全体の環境はどうなっていったかというと、土壌環境が劣化し、土の肥沃度が低下したり、過剰な農薬・肥料が土や川に流れ込むことによる環境汚染、また、直接的・間接的な人・動物への健康へ被害、さらには、CO2の300倍近い温室効果があるガスの排出など、結果的にあらゆる弊害をもたらすこととなりました。

 では、今後の未来は「化学農薬・化学肥料を全く使わずに低収量の食糧生産で良いのか」と言われたら、答えはNoです。2050年までに世界人口はさらに増加し、それに伴い食料を増産していく必要があります。一方で、農地面積は1960年からほぼ変わっておらず、今後も増やすことは困難であると予想されています。そのため、我々は引き続き限られた土地で効率良く食料を生産していく必要があります。

 そこで当チームは、「緑の革命2.0」として、「低農薬・低肥料で高収量・高付加価値の食料生産」に資する次世代農業技術の開発・事業化を考えております。

課題に対してどのような解決策をもつのか、独自の強みは何か

 我々SACMOTsのソリューションは何かというと、植物に対して「有効成分の導入効率を高くする技術=PDDS(Plant Drug Delivery System)」と「有効成分が導入されやすい植物体を作る技術=「環境記憶種子」の両アプローチで「緑の革命2.0」を目指していきたいと思っています。

 「有効成分の導入効率を高くする技術と=PDDS(Plant Drug Delivery System)」については、具体的に農薬や肥料等の有効成分に「キャリアDDS」という、我々が独自に選定した物質を付与し、植物への導入効率を高め、植物体内で効果的に作用できるようにします

 続いて「有効成分が導入されやすい植物体を作る技術=「環境記憶種子」については、まず、特定の環境処理を施した植物体から「その環境を記憶した種子」を採種します。その環境記憶種子は、通常の品種に比べ収量が高くなる傾向があり、さまざまな環境ストレスへの耐性を有している他、キャリアDDSを導入しやすい可能性があると考えております。

 この両技術を組み合わせることが、我々の挑戦する「緑の革命2.0」に対するソリューションです。

●今後の展開予定について

 PDDS・環境記憶種子ともに、引き続きデータを蓄積し、最適なアウトプットを提供できるようなプラットフォームを構築していきつつ、並行してビジネス上重要となる技術シーズ部分を特許等で権利化し、外部企業等との連携に向けて体制を整えていきます。

「1stRound」による資金支援、事業連携、各専門家によるサポート等の多面的な支援を通じ、最適な事業計画・資金調達を検討し1日も早い社会実装を目指します。

●採択総評

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 1stRound  長坂英樹氏の総評​

 人口・気候変動等により、世界中で食料危機が騒がれている中、食物に関する生産力向上と持続性の両立実現する新しい技術の開発が急務となっています。SACMOTs(サクモツ)は、製剤開発の目的のために約40年前に始まったタンパク質やペプチド、核酸などの薬剤の安定性や細胞膜を通過する能力も考慮に入れ、薬剤が「いつ、どの場所で、どの程度」効果を発揮するかを細かく調節する技術であるDrug Delivery System(DDS)の概念を応用して植物に適応させ、有効成分(農薬、肥料等)を植物内で効果的に(より少ない量で)機能させるP(Plant)DDSという技術をベースに挑戦的な農業ソリューションを提供をされている九州大学の研究チームです。グローバル大手化学系企業からも問い合わせを頂いているまさに生産性向上と持続的農業を両立させることが可能となる技術となり今後の事業化に期待をしています。

●技術シーズの社会実装を支援、国内初、大学横断・Non-Equity型最大規模の起業支援プログラム

 「1stRound」は、大学に関連する優れた技術や着想の事業化、社会実装を支援する国内最大の大学横断型インキュベーションプラットフォームです。初動を加速させるためのNon-Equity資金支援をはじめ、その事業価値が算定可能な事業体・スタートアップとなるためのハンズオン支援を行うべく、2017年より東京大学を母体に「起業支援プログラム」としてスタートしました。2019年より名称を「1stRound」とし、コーポレートパートナーの参画も得たコンソーシアム形式で展開、その後国立・私立大学が参画し、国内最大規模を誇る共催プログラムへと進化しています

● 過去採択企業の資金調達成功率は約90%以上、大手企業との協業も拡大

 「1stRound」では、過去8年、累計85チームを採択し、会社設立・資金調達を支援してまいりました。支援後1年以内の資金調達成功率は約90%以上、大型助成金の採択率50%以上を達成しております。また、コーポレートパートナーを中心とする大手企業との協業関係の創出にも注力しており、各回半数を超えるチームが協業に至っております。採択企業とコーポレートパートナーをはじめとする様々なステークホルダーを繋げ、双方の知見を活かしたより良いスタートアップ創出のためのコミュニティの醸成とともに、技術シーズを活用したスタートアップビジネス促進の加速を目指します。

 また、関連大学の起業家教育プログラムとの連携により、全採択数のうち再応募からの採択は20~25%を占めており、アカデミアからの起業をより後押しする、エコシステム構築を目指しています。

 「1stRound」:https://www.1stround.jp

1stRoundの仕組み
最大1000万円のNon-Equity資金、クラウドリソースやオフィスなどの開発環境及びキャピタリストと専門家による6ヶ月のハンズオンが無償提供されます。

SACMOTs(サクモツ)について

 「低農薬・低肥料で高収量・高付加価値の食料生産 」の実現を目指す、九州大学発のチームです。強みは、100年以上の歴史がある作物学研究室の「植物の収量・品質向上」に関する圃場から実験室レベルでの知見と、ビジネス・研究サイドともに研究室のOB・OGで構成されたチームメンバーです。植物に対して「有効成分の導入効率を高くする技術=PDDS(Plant Drug Delivery System)」と「有効成分が導入されやすい植物体を作る技術=「環境記憶種子」の両アプローチで「緑の革命2.0」を目指します。

 九州大学農学部作物学研究室の石橋勇志教授は、化学の知見・ノウハウをバックグラウンドに農学領域でご活躍されており、農研機構管轄のスタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)などにも採択されています。

  • 名称:SACMOTs(サクモツ)※チーム名
  • 所在地:〒819-0395 福岡市西区元岡744 九州大学 伊都キャンパス ウエスト5号館 西ウィング 4階 441
  • チーム代表:田島大地・村上真哉
  • 設立:準備中
  • 問い合わせ:sacmots@gmail.com